― 憎悪と暴力ではなく対話と
相互理解による打開を―
北京オリンピックに関連して、3月14日チベット・ラサで起きた騒乱・暴動を契機に、聖火リレーへの妨害、開会式への国家元首不参加表明が広がり、北京オリンピックの開催自体をも危惧する声が生まれています。北京オリンピックが世界の人々から祝福される平和の祭典として成功させるために以下の点を強く訴えます。
第一に、すべての国家・政治勢力・団体は、オリンピックを政治の手段として悪用してはならないということです。オリンピック運動の目的は、「人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進する」(オリンピズムの根本原則)ことにあり、この目的の実現には、オリンピック運動はあらゆる政治的な圧力にたいし、独立性を保持することが不可欠です。これが犯されたとき、ミュンヘンオリンピックでの惨劇やモスクワ、ロサンゼルスのボイコットなど、オリンピックと世界の若人が大きく傷ついたことを想起しなければなりません。
こうした点から、オリンピック運動の精神と目的を五大陸の人々が共有する目的で行われる聖火リレーへの実力を伴う妨害行為、さらには本来参加不参加は自由な選択とされている開会式への国家元首の参加問題をチベット問題に結びつけることなどは、オリンピック運動を政治的に利用するものといわざるを得ません。同時にこのことは、聖火リレーへの非暴力的な抗議行動に対する制圧行動を正当化するものではありません。
第二に、開催都市は、オリンピック大会が世界の若人が安全にプレーし友好を育む祭典とすることを保障する責任があります。オリンピック運動の根本原則は、「スポーツは人権のひとつ」であり、「人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別はいかなる形であれオリンピック・ムーブメントに属することとは相容れない」と明記しています。開催都市とその政府は、この原則を最大限尊重する責務があります。
その点で、世界の多くの人々は、中国政府がチベット問題などの人権問題の改善・解決に努力することを強く期待しています。オリンピック開催に際し、このことを真摯に受け止め、冷静で誠実な努力が求められています。チベット問題は、両当事者間に複雑で歴史的な問題があるにせよ、暴力的な妨害と制圧行動の応酬を直ちに停止し、対話による平和的な解決のための最大限の努力を求めるものです。

(新日本スポーツ連盟理事長 和食昭夫)