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2007年6月
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アクティブレストの実際
前項では、アクティブレストの効果、疲労の影響について取り上げました。次は、効果的に疲労をとるアクティブレストの方法です。
一日の仕事を終え疲れた身体で家に帰って、そのままバタンキューではなく、軽く身体を動かし、翌日の目覚めをさわやかにする。そんな日常生活にも役立つアクティブレストの方法です。
スポーツをする人たちのアクティブレストの典型例としてあげられるのが、「練習後のクーリングダウン」です。『スポーツのひろば』でもクーリングダウンの必要については何回か取り上げましたが、山本先生も、「一般的な傾向としてウォーミングアップは入念に行なうけれども、クーリングダウンはおろそかになりがちです(編集部=耳の痛い人も多いのでは?)。しかしこれをしっかりやるかやらないかで、翌日以降のコンディションが大きく違ってきます。特にマラソンなど身体負荷の大きなスポーツをやったあとは、クーリングダウンの持つ意味が大きくなります」と書いています。
ところで最近のスポーツ界では、クーリングダウンの内容が見直されているそうです。クーリングダウンとして、どのような運動を行なうのが最も効果的なのか。ただ漫然とクーリングダウンを行なうのではなく、その効果的な方法が研究されているのです。
――そこから導き出された結論は、「主運動と同じ運動を軽めに」行
なう方法が最適だろうという考え方です。――
主運動とは、野球では投げる、打つ動作、陸上なら走る動作、水泳なら泳ぐ動作などを言います。こうした主運動を軽めということは、野球なら軽くキャッチボールなど、水泳なら軽く泳いだりします。マラソンのゴール後に競技場をゆっくり走るランナーがテレビに映し出されますが、まさにあれは主運動を終えクーリングダウンをしているのです。
――ストレッチングが疲労回復を促す理由として、いくつかの生理学的効果があります。それらすべては、疲労回復に関係してきます。
最大の効果は、血行の促進。ストレッチングでは、筋肉を大きく伸ばしたり縮めたりを繰り返します。この行為によって静脈がマッサージされ、静脈内に滞っていた血液が心臓に向かって流れ出します。これを筋肉のポンプ作用とい
います。
疲労物質と呼ばれる乳酸は肝臓に運ばれ化学処理され、エネルギー源として再利用されますが、このときの作業効率の決め手となるのが、血液循環です。つまり、血液循環が活発であればあるほど、乳酸の処理が早くなって疲労回復が進みます。血液循環を促進させる手段としては、入浴やマッサージも有効ですが、ストレッチングはいつでもどこでも、手軽に行なえるところが他にはないメリットです。――

この他の効果として――肩こりなどの原因となる「うっ血」に対して、血行を促進することで血液の流れを正常に戻してくれます。また、ストレッチングにより筋肉を伸ばすことで、その刺戟が感覚神経を通じて中枢に伝えられ、筋肉のストレスが緩和し、リラックスします。――
ストレッチングには、このような効果の他に、柔軟性のチェックもできるというメリットがあります。
――ストレッチングを日課とすれば、ストレッチをやりながらその日の柔軟性がチェックできます。毎日でなくてもいいので、ある程度メニューを決め、定期的に同じ部位のストレッチングを行なうように習慣づけます。すると、毎回に変化が実感できます。――
ストレッチングの方法については、紙面の都合上掲載できませんので、『アクティブレストのすすめ』または『スポーツのひろば』(05年11〜06年5月号)を参考にしてください。
日本人は世界まれに見る「風呂好き」といわれています。一日の疲れを風呂で流す、という人も多いことでしょう。そんな入浴タイムをアクティブレスト的に使うと、ただつかっているより疲労回復の効果を期待できます。
まずは、湯船につかることの効果です。
――汗や汚れを落とすだけならシャワーで十分ですが、湯船につかることで、次のような物理的効果が得られます。
水圧―身体を圧迫して静脈血の流れを促すので、身体活動によって生じた乳酸など疲労物質の代謝を促進する。
温熱―身体を温めることで血管が拡張する。これも疲労物質の代謝を促す。
浮力―重力から開放されるため、全身の筋肉がゆるむ。腕や脚だけでなく腰や背中といった姿勢を保持する筋肉もゆるむので、腰痛の予防・改善につながる。――
では、お風呂で行なうアクティブレストには、どんな方法があるのでしょうか?
■せっけんマッサージ 旅行やハイキングで歩き疲れたとき、あるいはなれない肉体労働で特定の筋肉が疲れたときは、せっけんマッサージがおすすめです。手の平にせっけんを泡立て、筋肉をマッサージします。
■交代浴 疲労が激しい場合は、交代浴がおすすめです。特に疲れている部位に対して、シャワーを使って水とお湯を交互にかけます。それぞれの温度の目安は、水が一五〜二〇℃、お湯が四〇〜四五℃程度です。まず湯船につかって十分に体を温めたあと、水から始めます。疲れている部位、たとえば脚などに、十五秒ほど水をかけます。次にお湯を四〇秒ほどかけます。お湯をかける代わりに湯船につかる方法でもかまいません。次にまた水を一五秒ほどかけます。これを五回ほど繰り返し、最後はお湯で終わります。温めると血管は拡張し、冷やすと収縮します。それを繰り返すことで、ポンプのような作用が働いて、ただ温めるより効果的に血行を促進できます。
■入浴後にストレッチング を入浴後は温熱効果で筋肉や関節が伸びやすくなっているので、ストレッチングの絶好のタイミングです。
テレビや国際大会などで良く目にするトップ選手のコンディショニング法の中で、市民スポーツにあまり普及していないのが、アイシングです。
「氷さえあれば、どこでもできる手軽なコンディショニング法であり、テクニックもまったく難しくない」そうですので、この際、アクティブに試してみましょう。
――アイシングの用途は大きく分けて二つあります。ひとつはスポーツ中によく起こる、捻挫、打撲、肉離れのような「急性のケガ」に対する応急処置。もう一つは、ピッチャーの肩や肘、長距離ランナーの膝など、繰り返し負荷がかかる部位に起こりがちな「慢性のケガ」に対するケア。その中心をなすのは、痛みの緩和と炎症を最小限にくい止める効果です。まず冷やすことで患部に対して麻酔効果が働き、痛みが緩和されます。すると、痛みで縮こまっていた筋肉も動かしやすくなります。そして患部の細胞を一時的に冷凍保存の状態にして代謝レベルを下げ、少ない酸素や栄養でも生きられる状態にします。冬眠に近いイメージです。――
では、どんな状況のときアイシングをするのが効果的なのでしょうか。
――・ 長い距離を歩いて足の裏がとても疲れた(多少痛みもある)→足の裏をアイシング・ 慣れない日曜大工で握力を使い、前腕部や手が疲れた→前腕部と手をアイシング・ マラソン大会に出場し、明日以降の疲れが心配→大腿部を中心に脚全体をアイシング・ ふくらはぎがつって、元に戻ったが痛みが残っている→ふくらはぎをアイシング・ 階段の上り下りなどで、時々膝が痛む→膝をアイシング・ 長年患っている手首の腱鞘炎が時々痛む→手首をアイシング――
アイシングというくらいですから、用意するものは基本的に氷だけです。
 ――氷をどのように使うかは、冷やす部位によって若干違ってきます。脚の裏や膝、手首といった小さな部位の場合は氷をじかに皮膚に当てて、溶かしながら動かす方法が最も手っ取り早いでしょう。この方法を「アイスマッサージ」と言います(図4〜5)。氷は、家庭用冷蔵庫で作った四角い氷でかまいません。表面に霜がくっついていると皮膚に張り付いてしまうので、使う前に少し水で溶かしてから使いましょう。
片手で氷を持ち、冷やす部位に対して、広い範囲で円を描くように動かしていきます。一回当たり、氷一個分冷やせば十分です(五〜一〇分)。
手や足を冷やすときは、バケツなどに氷水を入れて、その中に浸す方法もあります。大腿部や肘、肩、膝、足首などを冷やす際には、「アイスパック」と言って、ビニール袋で氷嚢をつくると便利です。これを冷やしたい部位に当てて、上から伸縮性の包帯などを巻いて固定し、一〇分程度冷やします(図6)。
アイシング専用の氷嚢も売っています。――
注意点がいくつかあります。
――家庭用冷蔵庫で作られた氷は温度が低すぎる場合があり、そのまま使うと皮膚を冷やしすぎ、凍傷になる危険性があります。アイシングに適した氷の温度は0℃で、これなら凍傷になる危険性もありませんし、0℃の氷はマイナス温度の氷よりも熱を奪う効率が圧倒的に優れています。ですから水をたして溶けかかった状態を作り、0℃にできるだけ近づけて使ったほうがいいわけです。――
このように説明されると、トップ選手のものだと思っていたアイシングも身近になります。
この他のアクティブレストには、近年、スポーツ選手たちが盛んに取り入れているという「アクアコンディショニング」(プールを使ったアクティブレスト)や、マッサージなどもあります。
スポーツの場面で、そして日常生活でも、アクティブレストの底流にある「文字どおりアクティブに、疲れを取りたいなら、じっとしていないで動こうよ!」を実践し、スポーツ活動のレベルアップをめざしませんか。
(構成・桑名令子)
※図表はすべて、『疲れたときは、
からだを動かす!』より転載
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