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アクティブレスト 疲労は体を動かしてとる!
2007年6月







 「アクティブレスト」(Active Rest) という言葉、市民スポーツ人の間ではあまりなじみのない言葉ですが、スポーツ界では疲労回復が早い、次の試合に疲労が残らないなどの結果から注目されています。この考え方は、スポーツをする人はもちろん、日常生活にも活用できると提唱しているのが、山本利春さん(国際武道大学)です。
 
アクティブレストとは・・、山 本先生の著書『疲れたときには、 からだを動かす‐アクティブレス トのすすめ』(岩波書店)から、 その考え方と、実践方法を抜粋し ました。(― ―および「 」内 は引用です)


 スポーツにおける疲労を取ることの意味
 まずは、トレーニング効果と疲労の関係についてです。
――スポーツ選手は、記録向上や技術の向上、勝利のために、日々ハードなトレーニングを自らに課します。それは、身体の変化、すなわち筋力の向上や持久力の向上がなければ、競技会においてよい成績が収められないからです。
  トレーニン グのレベルが向上することは、それだけ身体への負荷も増大します。たとえば、筋力トレーニングで一〇〇キロのバーベルを持ち上げていた選手が、その一〇〇キロを持ち上げられるようになれば次は一一〇キロ、一二〇キロと負荷レベルを上げていきます。それに伴って筋肉に対する負荷も大きくなり、比例して筋肉の疲労度も大きくなります。つまり、強く、速くなるためには、質的にも量的にも高いレベルのトレーニングが必要とされ、それにつれて疲労度も大きくなる、という関係が、トレーニングと疲労の間には常に存在するわけです。
  もし前日までの疲労を引きずったままトレーニングを行なえば、その質は低下することは明らかです。結果として、トレーニング効果は上がらず、場合によっては、体力レベルが低下していくという悪循環に陥ってしまいます。日々のトレーニング効果を着実に進歩させるためには、「疲労」をどうコントロールするか、「疲労」とどのように折り合っていくか、がとても重要になってきます。スポーツにおけるトレーニングの成否を分ける要素、それが疲労のコントロールです。――

 もし疲労をまったく感じないアスリートが存在したら、その選手は「永遠に進歩し続け、無敵になれる」そうです。そこまでいかなくともより高いトレーニング効果を期待し、「いかに疲労の蓄積を抑え、身体への負担を減らしてトレーニングを実行していくか。これがスポーツ現場における共通の、そして永遠の課題」なのです。疲労の回復は、体力面だけでなく、技術面においても大きな影響を与えます。
  技術の向上をするためには、「質の高い反復練習が必要」です。私たちが日々練習をするのも、速く走るための技術、強く打つための技術などを習得し、うまくなることを目的としています。それは、チームスポーツでも同様。サッカーやバスケットボールなどでは、個人の 技術の向上と同時に、フォーメーションなど戦術面での練習を積み重ねることによって、試合でそれを用いることができるのです。
――前日の疲れを残した状態で技術・戦術練習をすることを想像してみてください。おそらく身体は重く切れがなく、思うように動きません。集中力も低下しているので基本的な約束事を忘れてしまったり、視野が狭くなったりして、チームプレーがうまく成立しません。
  ミスを減らし、高度な技術・戦術を身に着けていくためには、心身ともにできるだけフレッシュな状態で練習に臨むことが必要です。疲労を残していては練習の効率は間違いなく低下します。――
 このように、疲労とトレーニングの効果の関係を知ると、「プロチームやアマチュアのトップチームで活躍するアスレティックトレーナー、コンディショニングコーチ、フィジカルコーチたちの重要な関連業務に、いかに速く疲労をとるか、あるいは、いかに疲労しにくい身体をつくるか、つまり疲労のコントロールがある」のもうなずけます。




 アクティブレストの考え方
 アクティブレストは、日本語では「積極的休養」と訳されています。「一般用語としての認知度はゼロに近く、もっぱらスポーツ界で用いられている」そうです。では、アクティブレストはスポーツ界にどのように導入されていったのでしょうか?日本のプロスポーツの代表格である野球とサッカー。ともにかつては、「完全休養日」をつくっていました。
――九三年にスタートしたJリーグでは、九五年、年間を通して週二日という過密日程が組まれます。例外を除いて、水曜日と土曜日に試合が行なわれるスケジュールでした。サッカーはご存知のとおり、前後半あわせて九〇分間を走り回り、相手とのぶつかり合いも多いスポーツです。週二回のゲームが選手の身体的負担を大きくし、また、疲労を放っておくとケガをしやすくなります。――

  「各チームにとって、限られた時間の中で疲労をどうコントロールし、次の試合に備えるか、ということが大きなテーマ」になりました。しかし、週二回の試合では中二〜三日の余裕しかありません。その中で、完全休養日をとることはどう考えても無理があります。そのうえ、試合のない日は疲れを取ることだけでなく、前回の試合の分析や修正、次回の試合の相手への対応、シーズン中放っておくと低下する体力を維持するためのトレーニングなど、チーム、個人にとって勝利を目指すための貴重な時間ともなります。これら複合的な要因により、コーチングスタッフたちは「疲労をコントロールしつつ、必要最低限の戦術練習と体力トレーニングをどう実行していくか?」に頭を悩ませることになります。
――そこで急浮上したのは、アクティブレストの考え方でした。限られた時間を使って、少しでも効率的に疲労を取る。さらに多少のトレーニング要素をその中に組み込み、体力維持にもプラスの効果を狙う。これがアクティブレスト導入の根本思想です。
  最初に改革されたのは、試合翌日の過ごし方でした。Jリーグも含め常識的に行なわれていた疲労回復法の「試合翌日の完全休養」を、複数のチームが相次いでやめます。試合翌日に集合をかけ、軽い運動を行なう取り組みを始めたのです。アクティブレストです。試合に出場した選手全員をスポーツクラブに連れて行き、プールで行なう「アクアビクス」を取り入れたチームもあったそうです。
――結果は……吉と出ました。アクティブレストのパターンが定着するに従って選手たちのコンディションは向上し、ケガも減ってプレーの質も向上するという好循環が生まれていったのです。当初はマッサージなど受動的な手段に頼ろうとしたチームもあったようです、結局、アクティブレストの効用が高く評価され、多くのチームが取り入れるようになりました。

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